今年(2006/07)のインフルエンザについて
由利本荘医師会感染症担当理事
由利組合総合病院内科 朝倉健一
今年も寒さが厳しくなり、またインフルエンザが流行る時期が近づいてきました。そして、最近では新型インフルエンザに備えて準備が進んでいるという話も耳にすることが多くなりました。一体、今年のインフルエンザはどうなるのか、また新型インフルエンザとはどういうものなのかについて述べてみます。
Q:昨年はインフルエンザはそれほど流行しなかったと記憶していますが、今年は流行しそうですか。
A:確かに昨年はそれほど流行はしませんでした。当院の昨年の実績でふりかえってみると、A型が1月から2月にかけて流行しましたが、あまり大きなものではありませんでした(図1)。これに比べてB型はほとんどみられませんでした。次に、過去4年間の当院にかかった患者さんのA型とB型の総数を比較した図2でみると、A型は同じくらいの数ですが、B型は一年おきの流行となっているのがわかります。また移り変わりをまとめた図3でみると、1月から3月にかけて流行のピークが多いものの、5月頃まで続いた年もありました。年齢別では、小児を含めた若い年齢層が多いものの、高齢者も例外ではありません(図4,5)。以上のデータからみると、今年(2006/07)はA型、B型が両方流行する可能性が大きいと思います。
Q:インフルエンザと普通のかぜはどこが違うのでしょうか。
A:インフルエンザの症状はウイルスのついた小さな粒子を吸い込んでから、翌日や2日後に症状が出ます。のどの痛みや鼻水と急な発熱や筋肉痛、関節痛などです。普通のかぜと違うのは、熱が急に38℃や39℃に上昇することと、筋肉痛、関節痛、だるさなどの全身症状が非常に強いことです。A型とB型を症状だけから区別することはできません。咳は少し遅れて出てくることが多いようです。
Q:診断はどのようにするのでしょうか。
A:症状から見てインフルエンザが疑われる場合は、鼻水をとってインフルエンザ診断キットを使った検査を行います。20分くらいでA型かB型かの結果が出ます。今のキットの感度の良さからして、陽性であれば間違いなくインフルエンザといえます。
Q:どのようにして人にうつるのですか。
A:インフルエンザがうつるのは、くしゃみや鼻水そして咳が原因です。したがって、咳をしている人は、自分を守るだけではなくマスクをして人にうつさないことも大事なことです。インフルエンザシーズンには人ごみを避けることも有効です。
Q:ワクチンや薬は効果がありますか。
A:やはり、予防の決め手はワクチンを12月までに打っておくことです。ワクチンを打っても抵抗力がつくまでに2週間はかかりますから、1月ではもう間に合わないことも考えられます。また、よく誤解されていますが、インフルエンザワクチンには、A型の株が2つとB型が1株の両方が入っていますので、両方の型に有効です。有効率はその年によって違いますが、70から80%といわれています。有効期間は半年間です。
また、薬に関しては、48時間以内に飲むと症状が劇的に良くなります。大変優れた薬ですが、小児に投与して副作用が出たという報告もあります。もちろんインフルエンザにかからないにこしたことはありませんがワクチンを受けたほうがより安心できると思います。
Q:ところで、トリインフルエンザや新型インフルエンザが話題になっていますが、今のインフルエンザとはどこが違うのですか。
A:トリインフルエンザとヒトがかかるヒトインフルエンザは基本的に同じウイルスの仲間です。インフルエンザウイルスの種類には大きく分けて、A型、B型、C型がありますが、この中でA型が最も毒性が強く、顔つきもしょっちゅう変わる性質があります。トリインフルエンザもA型に入ります。
トリインフルエンザのままであれば、大量にウイルスを吸わないかぎりは、ヒトには感染しません。しかし、何らかの理由で、トリからヒト型へと顔つきが変わったりすると、あっという間に大流行が起きてしまいます。
もし、トリインフルエンザとヒトインフルエンザウイルスが一緒に存在した場合、この2種類が混じって全く新しいタイプのインフルエンザウイルスができる可能性があります。実はこれをわたしたちが、今、最も恐れている先行きです。
インドネシアを中心に東南アジアでは、トリインフルエンザにかかって亡くなるひとの報告が続いています。そして、だんだん人に感染しやすくなってきたことが確認されています。完全に人型に変わったものを新型インフルエンザと呼びます。今までとは全く異なるウイルスの性質のために、大流行する危険性が大きいわけです。
Q:秋田では新型インフルエンザのもとになるトリインフルエンザは発生しているのでしょうか。
A:今のところは、秋田県でトリインフルエンザが発生したという事実はありません。最近は、隣の韓国で発生が報告されていますが、さいわい日本国内ではみられていません。秋田県でも定期的に監視していますので、当分は心配ないと思います。
Q:新型インフルエンザの発生はあるのでしょうか。また、その対策はありますか。
A:現時点では、世界でまだ新型インフルエンザの発生は確認されていません。発生するとすれば、トリインフルエンザが濃厚に感染している地域と考えられます。ニュースなどで情報を常に得ておくことが大切です。もし発生した場合は、その地域には、特別な用事がない限り近づかないほうが賢明です。予防としては、マスク着用、手洗い、うがいといった、今までのインフルエンザに対しての方法と同じになります。一説によれば、トリインフルエンザとヒトインフルエンザのタイプは似たところもあるので、今のワクチンもある程度効果があるといわれています。やはり、ワクチンはやったほうが賢明だと思います。
Q:最後に、この冬を快適に過ごすために何か追加することはありますか。
A:特に、お年寄りの方は、インフルエンザで亡くなるよりも、そのあとの肺炎で亡くなることが多いのが実情です。今は、この肺炎の原因としてもっとも多い肺炎球菌に対してもワクチンができています。当院でも一昨年あたりから積極的にこの肺炎ワクチンを打つように勧めたところ、肺炎で亡くなる方が減ってきたようです。今のところ、一生に一回しか注射できませんが、インフルエンザワクチンと一緒にされると快適な冬が過ごせると思います。
(資料提供:由利組合総合病院中央検査部)